1 個人の尊重
日本国憲法は「すべて国民は,個人として尊重される」(13条)として,なににもまさって具体的な一人ひとりの人間が尊重されること(個人の尊厳)を宣言しています。この個人の尊厳こそが憲法の核心で,ここから基本的人権の尊重が要請されます。そこで憲法は,人権諸規定(前文,9条,11条ないし40条,97条)や権力分立規定(41条,65条,76条,92条)とともに,憲法の最高法規性(98条)・違憲審査制(81 条)や硬性憲法規定(96条)により,多数派の手によっても少数者・弱者の権利・自由が損なわれないよう定めています。まさに,日本国憲法は,近代立憲主義の系譜に連なる人権保障の体系そのものなのです。

2 憲法の基本原理
人権保障体系である日本国憲法は,国政の最終意思決定という意味での主権が国民に存するという国民主権(前文,1条)を基本原理としています。これは,天皇主権の下で軍国主義・全体主義に陥った大日本帝国憲法体制に対する深刻な反省の見地から確立された原理であり,個人の尊厳(13条)を確保するうえでの当然の事理といえます。立憲主義憲法のもとでの民主政治の貫徹により,個人の人権保障を一層確かなものとしたのです。
それとともに日本国憲法は,国際紛争を解決する手段としての戦争・武力による威嚇・武力行使を放棄する(9条1項)のみならず,一切の戦力を保持せず,交戦権を否認する(9条2項)という徹底した平和主義を基本原理として掲げています。ヒロシマ・ナガサキという人類史にない凄惨な経験を経て,国権の発動たる戦争こそが最大の人権侵害であるとの深い自覚のもと非武装・非軍事により恒久の平和を達成すべきことを定めたものです。同時に日本国憲法は,全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免れ平和のうちに生存する権利を有することを確認して(前文),この地球全体にわたる恒久平和の実現を目指すべきことを謳っています。

3 ところが,最近,政府・政権与党を中心に憲法96条の発議要件を緩和する改定を先行させ,憲法改正を容易にしようという動きが出てきました。
これは2012年4月に発表された自民党憲法改正草案に沿うもので,最終的には憲法9条2項を廃棄して国防軍を創設し,併せて集団的自衛権を憲法上明記することに主たる目的があることは明らかです。それは米軍と一体となって世界のあらゆる国や地域で戦争遂行を可能にしようとするもので,前述の恒久平和主義・人権尊重主義と真っ向から矛盾衝突する憲法破壊というべき事態であり容認できません。
加えて,そもそも憲法96条の硬性憲法規定は,98条及び81条と相まって憲法保障を形成するものであるとともに,時の政府の都合による改憲を阻止するという意味において最も重要な規範です。それは何より,人権保障のために権力を制限することを本質とする近代立憲主義の要請なのです。憲法96条先行改定は断固阻止しなければなりません。
私たち連帯の会は,これからも改憲論議の問題点を抉り出し,憲法改悪を阻止するための諸活動に邁進し続けます。